第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
しかし、アリシアの唇に触れるより前に彼の動きは止まった。
薄く目を開くと、イルヴィスはごく近い距離でアリシアの目をじっと見つめていた。
「呼び方……」
「え?」
「カイのことは早々に名前で呼んでいたし、ディアナに至っては呼び捨てにしていた。だが私のことは、いつまで『殿下』なんだ?」
「あ……」
言われてみればそうだ。『殿下』と呼ぶべき対象が何人かいる時は名前を付けていたが、そうでなければ、イルヴィスのことはいつも『殿下』と呼んでいる。
しかしそうは言われても、どう呼ぶのが正解なのだろう。名前に「様」を付ければ良いのだろうか。さすがに王子のことを呼び捨てで呼ぶ勇気はない。
少し迷った結果──
「イル様」
カイやディアナのように愛称で呼んでみた。そういえば、前に一緒に街を歩いた時もこう呼んでいた気がする。
イルヴィスは満足そうに口角を上げた。そして、つい油断してしまっていたアリシアの唇を奪う。
「そ、そろそろ勘弁してください」
求めるように、唇を何度も繰り返し重ねられ、アリシアはとうとう弱々しい声で訴えた。
ほとんど涙目になっており、それを見たイルヴィスは不安げな色を浮かべた。
「……嫌だったか?」
「っ、いえ、全然嫌ではないですけど」