第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 そう自分に言い聞かせたことで気持ちに余裕を取り戻したイルヴィスは、穏やかな表情でアリシアに問いかけた。



「それで、初めて入った海はどうだったんだ?」


「……!すごかったです!」



 しょぼくれていた表情がパッと明るくなる。



「海って、あんなに冷たくて、波があって、気持ちいいんですね!水は透き通って綺麗だし、なのに遠くにいくにつれて濃い青になっていくのが本当に不思議でっ!」



 話しているうちにしだいに前のめりになっていっている。それを見ているだけで、イルヴィスは胸の辺りが暖かくなるような気がして、笑みがこぼれた。

 イルヴィスはもともとあまり笑う方ではなかったのだが、アリシアと一緒に過ごす時間が増えるのに比例して、笑う回数も増えていると自分でも思う。


 少し前までと打って変わって楽しそうに話をするアリシアと、そのアリシアに熱い視線を送るカイを見て、イルヴィスは今回の旅行を許可したこと、それから自分も同行したということが、実に適切な判断であったと実感するのだった。


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