第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II


 正直、再会した時まだ彼女に婚約者がいなかったのは奇跡だと思う。

 聞けば縁談は特に来たことがないというのだが、本当かどうかは怪しい。恐らく本人が知らないだけで、話はいくつもあったのではないだろうか。

 自分が「初恋の少女と伯爵令嬢のアリシアは別だ」と妙な意地を張り、社交の場で交流してこなかった間に、どれだけの男がアリシアに好意を持って目を向けていたのかと考えると、悔やまれてならない。


 だから一、二年ぶりくらいに会った幼なじみが「昨日出会い恋に落ちた」と語る女性の正体がアリシアであると判明したときも、驚いたというよりは「こいつもか……」という感じだった。

 だが、理解しているとはいえ、思ったことを恥ずかしげもなく口にするカイに頬を赤くしていた彼女は、見ていて良い気分のはずがない。貴女の婚約者は自分なのだと念を押しておきたくなった。我ながらその程度で重いだろうと言い留まったが。



(どれだけの輩がアリシアに好意を持とうが、私の婚約者であるという事実は変わらないしな)



< 49 / 243 >

この作品をシェア

pagetop