カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「もしかしてあなた様は、この劇場を運営する――」

清良がその名を口にする前に、男性がご明察とばかりに目元を緩めた。

「名乗るのが遅れて申し訳なかった。オーナーの城ケ崎だ」

やっぱり、と清良は眩暈を覚える。

万一オーナーと顔を合わせたときのために、その名前と生い立ちはしっかりと記憶してきた。

城ケ崎総司。城ケ崎財閥の長男で海外の名門大学を卒業。その語学力と商才を活かし、世界中で事業を展開する経営者だ。

ついた異名はジェットセッター。

清良は初めてその単語を聞いたが、世界中を飛び回り活躍するお金持ちの総称のようだ。

どうやらとんでもない人物に迷惑をかけてしまったらしい。

よりにもよって今日の主催者とは。これが鞠花にバレたらどうなってしまうことか……。

「それでお嬢さん。目が覚めたばかりで申し訳ないが、説明してもらいたい」

おもむろに彼はサイドテーブルを挟んで向かい側にあるチェアに手を伸ばした。肘掛けの陰に隠れていたのは、清良のクラッチバッグだ。

男性は堂々とバッグを開き、中をあさる。

「あ、あのっ――」

「勝手にすまないが、中を拝見させてもらった。君の連絡先を知っておきたくて。ご家族が心配しているかもしれないだろう? それで気づいてしまったんだが――」

彼は、バッグの中から封筒を取り出した。白地に金の縁取り。表に大きく『院瀬見鞠花様』と記載されている。

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