カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
正直なフリをして頭を下げ続ける。

鞠花が悪者にならないように、最大限気を遣って言い訳したつもりだったが、話を聞いた男性は眉をひそめた。

「こちらの持っている情報を補足しよう。実は、鞠花さんが大の観劇嫌いで、ときたま身代わりを立てて出席するというのは一部の関係者の間では有名な話なんだ」

本当は体調不良などではなくサボタージュ――どうやら彼は、鞠花の思惑などお見通しだったようだ。

かまをかけられていたことに気づき、きゅっと唇をかみしめる。

「鞠花さんに直接お会いしたことはないが、彼女の父親である院瀬見議員とは面識がある。どうして君が替え玉だと気づいたかって、君の身長や顔立ちが議員の遺伝子を受け継いでいるとは思えなかったからだよ」

院瀬見議員は小柄で、身長は一七〇センチもない。同じく小柄な鞠花も、一五〇センチ台前半だ。

対して清良は一六三センチ。ヒールを履けば議員の身長ですらゆうに超えてしまう。

顔だって、院瀬見家の典型的な丸顔と違って、清良は顎が小さく若干面長。

それでも観劇程度であれば、別人とバレることはなく――いや、実際はバレていたようだが、表立って問いただされることはなかった。

上映中は暗闇。上映直前に聴衆席につき、直後に抜け出せば、ほかの観客と言葉を交わすこともない。

招待状さえ受付に提示しておけば、出席したことになる。

そうやって今までも切り抜けてきたのだ。鞠花自身、今さらバレることなどないと、慢心していたのだろう。
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