カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
来客というが、定時後に訪れるお客様は少ない。

強いて挙げれば、お世話になっている部署付きの保険の外交員くらいか。あるいは、荷物の速達でも頼んでいただろうか……覚えはないけれど。

清良は首を傾げつつ「ありがとうございます、どちら様でしょう」と尋ねる。

「院瀬見様です。ご予約がないようですが、お通ししてもよろしいでしょうか」

「え……」

驚きで声が掠れた。

これまで鞠花が会社を訪ねてきたことは一度もない。

仕事中に電話が来たことは何度かあったが――と思い立ったところで、ああ、と頭を抱えた。

電話番号を変えてしまったから、連絡先がわからなかったのだ。北村と同じで、直接会社まで会いにきたのだろう。

外で待ち伏せしていた北村と違って、鞠花は堂々と受付に乗り込んできたわけだ。

そうまでして話さなければならない用件があるのだろうか。不吉な予感しかしない。

「……わかりました……伺います」

沈んだ顔で電話を切った清良に、横で聞き耳を立てていた仲根が不思議そうに尋ねた。

「どうかした?」

「……その……友人が勝手に来ちゃったみたいで……少し受付に行ってきてもいいですか?」

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