カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「あんたがちゃんと電話番号を教えてくれさえすれば、私だってこんな場所にわざわざ足を運ばなかったわよ?」

そもそも電話番号を変えたこと自体、連絡を絶ちたかったからだ。言うまでもなくわかっているだろうに、わざとらしく言う鞠花に清良は無視を貫く。

オフィスビルを出たところにある植え込みの前で清良は足を止めた。

「それで、何か用?」

周囲には行き交う人々。落ち着かないが、人の目があったほうがまだ安心だろう。前回彼女に会ったときは、危うくシュガーポットを投げつけられるところだったから。

鞠花はちらりと辺りを見回すと、鬱陶しそうに顔をしかめた。やはり不満のようだ。

「こんな場所で話をするなんて嫌だわ。着いてきて」

そう言って鞠花は大通りのほうに歩き始める。

歩道の脇に、院瀬見家の黒い高級車が止まっていることに気づいて、清良は身を固くした。

「行かない。ここで済ませて」

「別に変なところへ連れていったりしないわ。お茶のできる場所に案内するだけよ」

「北村くんにあんなことを命令したあなたを、今さら信じられると思う?」

『悪戯してやれ』――そんな指示を受け清良を襲おうとした北村。総司が駆けつけてくれなかったら、取り返しのつかないことになっていただろう。

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