カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
清良はごくりと息を呑んで「はい」と答える。

清良の中には、少なからず彼の力になりたいという意思がある。それが愛かどうかは別にしても。

「君は俺のprecious(プレシャス)……英語ができるなら、この程度の意味はわかるね」

……つまり、大切という意味だ。英語ではよく愛する人のことを『My precious(私の大切な人)』なんて呼ぶ。

その意味を理解して、でもふたりの関係に添うような単語ではない気がして、なんだかしっくりこない。

「君をないがしろにするつもりも、見下すつもりもない。この家は君のものだ。妻として堂々としていなさい」

凛とした命令が、清良の心の中に自然と溶け込んでいく。

――ああ、私は、彼の妻なんだ。暗示のように心の中で繰り返して、清良はその事実を呑み込んだ。

自分はこの気高い獅子のごとき男性の、特別な女性であるのだと。

にわかには信じがたいけれど、少なくとも他人からはそう見られている。

「清良。今夜は君を妻として特別に愛してやったほうがいい? それとも、理性的な話し合いがしたい?」

試すように覗き込まれ、清良の鼓動はいっそう高鳴りだした。
< 66 / 262 >

この作品をシェア

pagetop