デラシネ
彼女は毎度変わらず同じ言葉を吐く。こんな時間に一人で帰るだなんて危ないと思わないのか。そんなことに毎度苛立つ。
そう考えている間に帰り支度を整えて扉を抜ける彼女。急いで簡単に片づけを行い、たった一人の店員を帰らせる。エプロンを投げ掛けて彼女を追いかける。
一人の男が彼女の後ろを付けているようにも見える。
「ふざけんな」
苛立ち。
「おい」
男に聞こえるように、声を放つ。それに気づきすぐに他へ足を向けて行った。そのことに安堵し、彼女に声を届ける。
「澪(レイ)」
小走りで駆け寄る。俺の心配なんて気づきもしない。どうして追いかけてきたんだと言わんばかりの表情を向けてくる。
「なに」
「送る」
「ありがとう」