新」世界で唯一のヒーラーは生殺与奪を握っている。復讐の物語り
 兵士は消えゆく命の中で少女の姿を見つめていた。恨みの色ともあきらめの色ともわからない瞳の色。まるで捨てられた子犬ような表情を浮かべる。少女はその表情を見て、胸に痛みが走る。助けることができるのに見捨ててしまう罪悪感。自分が見殺しにしたという事実に恐怖を覚えて暗闇の中にすっぽりと落ちるような喪失感に襲われる。ああ、どうして私はここにいるんだろか?目の前の人を助けないで私は何をしているんだろうかと自問自答する。

 上官の後を命令されるまま付き従っていくと戦場で負傷したと思われる男が肩を抑えながらうめき声をあげている。見るからに重症とは言い難い彼の身なりは鮮やかな装飾が施されている服を纏っている。地面には脱ぎ捨てられたと思われる甲冑にも装飾が施されている。

 アリシアは一目見てそれが貴族だと悟った。上官に言われるまま治癒魔法を施すと、貴族の男は治療されるのが当たり前のだと言わんばかりに立ち上がり、礼も言わず立ち去っていった。

 

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