新」世界で唯一のヒーラーは生殺与奪を握っている。復讐の物語り
 貴族が自分より身分の低い者にたいして頭を下げることなどない。いくら聖女ともてはやされようともアリシアは騎士爵であり、貴族とは名ばかりの領地を持たない一介の騎士で魔法使いであった。 

 身分の違いを嘆くことはできない、自分も平民である兵士を見捨てているのだからという思いがあった。

 幕舎に帰りアリシアは眠りにつこうと袋に干草を詰めたベッドに倒れこんだ。肉体的疲労よりも精神的疲労のほうが酷い。眩暈を覚えて目頭を指で押さえ溜息をついた。伯爵、子爵、侯爵、男爵。今まで助けた人を思い返す。貴族しかいないのではないかと錯覚する。

 助けた数は圧倒的に平民が多い。けれど、見捨てた数の平民も多い。貴族に関しては見捨てた記憶がなかった。
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