捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「拓馬さん……雰囲気が前と少し変わりました」
「どういうふうに?」
「昔はもっと余裕があって紳士的な感じだったような。今はちょっと強引なくらいグイグイと……」

 どちらもドキドキさせられるけど。

 すると、ふいに腕を引っ張られ、椅子から立たされた。しっかりと腰に手を回され、さらには顎を捕らえられる。

「前の俺とは違うからまた逃げる?」

 至近距離で囁かれ、心臓が早鐘を打つ。

「や……そういうつもりで言ったわけじゃ」
「きみを俺のもとに繋ぎ留めておくためなら強引にだってなる。もうきみを見失いたくない。この手から離したくないんだ」

 切羽詰まった雰囲気で言われると、それだけ自分が必要とされているのだと感じる。
 拓馬さんの熱情に満ちた双眸が私に甘い魔法をかけ、陶酔させる。

「覚えていて。俺はきみともう二度と離れる気はない」

 唇が重なった瞬間、幸福感が満ちていく。

 この一瞬を、失うかもしれないと恐怖に怯えるより、繋げていく努力をしよう。

「俺、行ってくる」

 キスのあと、彼が言った。

「どこへ?」
「親父のところ」
「あ、待って!」

 私は拓馬さんが勇み足で出ようとするのを制止する。
 拓馬さんはシャツを掴んで止めている私を振り返った。

「どうして。このままじゃ……」
「違うの。今日、佐野さんに耳打ちされたの」

 話を最後までしていなかった。あのときの話には、続きがある。

「なにを?」

 怪訝な声で聞き返す拓馬さんを見上げ、息を吸った。

「明日の夜、必ず拓馬さんと揃って本邸へ来てくださいって」

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