捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
 あのあと、拓馬さんはお父様への怒りをどうにか鎮め、夕飯を食べていた。
 私もモヤモヤする部分は残っていたが、彼の意志の強さを目の当たりにしたおかげで夜は眠れた。

 そして迎えた翌日。拓馬さんは、早めに帰宅すると言って仕事へ行った。

 家事を済ませ、理玖と過ごしていたら、スマホが鳴りだした。着信主は彩希。

「もしもし、彩希?」
『お姉ちゃん! メッセージ見たけど!』

 威勢のいい声で、彩希が元気なのがわかる。

 彩希には今朝、ダメ元で理玖を預かってもらえるかメッセージで聞いていた。
 彩希の雰囲気から、無理なお願いに怒っているのかと思って、私は肩を竦めてぼそぼそと返した。

「ご、ごめんね急に。仕事もあるだろうし、無理だったら……」
『平気よ! ちょうど仕事は休みなの。それより、相手の実家に乗り込むって!?』
「乗り込むっていうか……今夜って向こうから指定されて」
『大丈夫? なんか理不尽なこと言われてるんじゃない? 私も加勢しようか!?』

 彩希には以前、電話で話したあとにもときどきメッセージのやりとりをしていて、拓馬さんのご両親に認めてもらうのは大変かもしれないと零していた。

 だけど、昨日の件は話していないのに、『理不尽な~』ってあたり的を射ていて驚いた。
 が、すぐに昔から洞察力に長けているもんな、と納得した。
 理玖を妊娠したときも、彩希は薄々様子がおかしいと気づいていたらしい。

「ありがと。理玖を見てくれているだけで十分助かる」
『まー、私がいたら取っ組み合いのケンカになりそうだし、ひとまず理玖とおとなしく留守番してるか……』

 電話口でブツブツと言っている彩希に、思わず笑いが零れた。

「うん。じゃあ、夕方理玖を連れていくね。彩希の分の夕ご飯も用意するから」
『え~ありがとう! 来るとき連絡頂戴ね。あ、理玖迎えに来るときは理玖パパも連れてきてよ。いっぺん会ってみたかったから!』
「え……」
『じゃね! 頑張って!』

 一方的に通話を切られ、スマホに目を落とす。

 そういや彩希はまだ拓馬さんと対面していなかった。
 はっきりと言う性格だから、拓馬さんに変なこと口走らないといいけど。

 とはいえ、彩希に背中を押され、勇気が出てきた。
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