捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
 夕方六時過ぎ。私はダイニングチェアに座って、気持ちを落ち着けていた。
 そのうち、拓馬さんが帰宅してくる。私は玄関先まで足を向けた。

「おかえりなさい。理玖は妹が預かってくれました」
「そうか。あとでお礼をしなきゃな。真希の妹さんには、俺がいないとき真希を支えてもらった恩もあるし……」
「彩希も拓馬さんに会いたがってました。その……ちょっと、きつい言葉とか言われる可能性もありますが……根はやさしいので!」

 私が言うと、拓馬さんは苦笑した。

「ああ。そうだよな。俺へは文句のひとつやふたつ言いたくもなるよな。今日ふたりで理玖を迎えに行ったとき、甘んじて受け入れるよ」

 過去の話をすれば、きまって拓馬さんは自分だけが悪かったように振る舞う。
 実際は片方に責任がある話ではなくて、それぞれの思い込みの強さや未熟さが招いた結果だというのに。

「その前に、このあと私がご実家でいろいろ言われるでしょう。でも違うことは否定するし、納得がいかなければ抗議だってすると思います。だから、拓馬さんも無理してすべて受け入れる必要はないですからね」
「真希は出逢ったときもそうだったけど、芯が通ってるよな。頼もしいよ」
「まあ……我慢が利かないとも言います……」

 自分の性格はよくわかっている。
 私はぼそぼそと返したあと、話題を変えた。

「ところで、本邸ってことは別邸もあるってことですか?」
「広さは劣るけど、本社からわりと近いところにね。主に親父が使ってる」
「じゃあ本邸にはお母様だけ……?」

 だとしたら、佐野さんを通して私たちを本邸に呼びつけたのはお母様ってこと?

「母と祖父がいる。ふたりとも家にいないことが多いから、ハウスキーパーがよく出入りしているかな」
「じゃあ、どのみちお父様はいないのかな……?」

 いてほしいような、いてほしくないような。いや。遅かれ早かれ、決着はつけなきゃならないのだから、いてくれたほうがいい。

「よくわからない。まあ、いてもいなくてもいずれは話をつけに行くよ」

 思ったよりも拓馬さんは自然体だった。
 頭に血が上ると話がこじれたりするし、私も変に力まずに話し合いに臨もう。

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