捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
 拓馬さんの車に乗って実家を目指す。
 どうしても緊張はしているけど、不安はない。

 ちらりと隣を見たら、拓馬さんと目が合った。微笑む彼を見て、私も笑顔を見せた。

 都内の一等地に荘厳な門構えの家を見つけ、絶句した。

 拓馬さんのマンションで多少免疫がついていると思っていたが、想像以上。
 奥には豪華な庭園が広がるのだろうと思わせる立派な木々が、数十メートル続く塀からのぞく景観だけで圧倒される。

 気づけば拓馬さんがセキュリティを解除していて、私は彼について門をくぐった。

「え……本当にここですか? どこかの高級旅館じゃなく?」
「旅館ほど広くはないんじゃないかな」

 敷石に導かれるように歩みを進めたら、和モダンなデザインの広い玄関にたどり着いた。
 拓馬さんは引き戸を開け、躊躇せず敷居をまたぐ。

「ただいま」

 拓馬さんが呼びかけると、綺麗に磨かれた廊下の奥からすらりとした女性が現れた。
 女性の中では背が高めでスタイルがよく、タイトな膝下スカートが似合っている。

「久々に顔を見た気がするわ。思ったより元気そうね」

 近くで見て驚いた。
 拓馬さんのお母様となれば、若くても五十歳前半くらいなものなのに十歳は若く見える。

 まじまじと見ていてさらに気づいたのは、拓馬さんはお母様似ということ。
 目鼻立ちもだけど、話し方とか雰囲気がそっくり。そういえば、お父様と会ったときには似てるとはあまり思わなかった。

「ああ。彼女のおかげ。真希、俺の母親。彼女は宇川真希さん」
「は、初めまして。宇川真希と申します」

 慌てて深くお辞儀をする。そういえば、お父様ばかり気にして、お母様がどういう人なのかあまり聞いていなかった。

 このまま門前払いされるかも……と不安な気持ちで頭を上げられずにいたら、頭上に凛とした声が落ちてくる。

「拓馬の母、冴子(さえこ)です。どうぞ。拓馬、客間へご案内して」

 あっさりと通されて、拍子抜けした。

 廊下を歩いていくお母様の後ろ姿を茫然として見ていたら、拓馬さんに背中をぽんと叩かれる。
 私はスリッパに足を通し、拓馬さんの一歩後ろを歩きながら小声で尋ねた。
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