捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
 恵比寿駅には六時四十五分には着いていた。
 電車の中で佐渡谷さんからメッセージが一通きて、私はその指示通り東口で彼を待つ。

 ただ黙って立っているだけなのに、小走りしたときみたいに心臓がちょっと跳ねてる。

 男の人との待ち合わせなんて久々だし、ワンピースだっていつぶりだろうか。

 落ち着いたネイビーのアイラインワンピ―ス。
 去年、敦子と一緒に買い物したときに、綺麗なシルエットに惹かれた。

 普段はもっぱらパンツスタイルの私が、つい衝動買いをしてしまったのはいいけれど、着る機会がなかった。

 変じゃないよね……?

 頻りにロング丈のスカート部分に触れては、そわそわとする。
 数分後、目の前にとても高級そうな黒いスポーツカーが止まった。凝視していると、ウインドウが下がっていく。

「待たせてごめん」
「さ、佐渡谷さん!」

 ここまで高そうな車でやってくるとは想像してなくて、思わず茫然と立ち尽くす。

「どうぞ。隣乗って」

 佐渡谷さんに促されて我に返り、反対側へ回る。遅る遅るドアハンドルに手を伸ばし、車に足を乗せた。シートに腰を沈めるなり、これまで乗ったことのある車とはなにもかも違う、と驚いた。

「私、外国車って初めて乗ります。なんだか変な感覚」

 私はペーパードライバーゆえのゴールド免許保持者だ。一般的な運転席側に座るのが、もう五年以上前の話。

「左ハンドルだからね。俺も慣れるまで違和感あったよ」
「さっき外観もかっこよくて驚きましたけど、こういう車って内装もすごいんですね。こんな造りのロボットとかアニメにありそう」

 ハンドルだけでなくいたるところになにかのスイッチがついていて、メーター部分だけではなく、ギア周りのスイッチも煌々と光っている。夜だから余計に目立つ感じだ。

「はは。まあ、大概男はそういうものが好きなんだよ」

 そんな会話をしているうちに、十分もしないで目的地に到着した。車から降りると、隠れ家的な外観をした、真っ白い壁のおしゃれなレストランが目に飛び込む。

 建物の中から漏れるオレンジ色の灯りが、庭の緑を柔らかく照らしていてとても雰囲気がいい。

 私は幻想的な気分で、よそ見をしながら入り口へ歩いていく。
 ポーッとしていると、佐渡谷さんがドアを開けて待っていてくれているのに気づき、肩を窄めてそそくさと入店した。

 すると、店内は期待を裏切らないほど素敵な空間で、思わずため息が零れた。そこに、男性スタッフがやってくる。

「いらっしゃいませ。ご予約のお名前を頂戴いたします」
「佐渡谷です」
「佐渡谷様。お待ちしておりました。ご案内いたします」

 恭しくお辞儀をされ、私たちは奥へと案内された。
 個室に通された私たちは、向かい合って席に着く。


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