捨てられたはずが、赤ちゃんごと極上御曹司の愛妻になりました
「素敵なお店ですね。雰囲気とか……インテリアまで凝っていて」

 木の温もりが伝わってくるテーブルや、頭上にぶら下がった球体のペンダント。
 窓の外を見れば、さっき通り過ぎてきたライトアップされた庭園が眺められて本当に素晴らしい。

「世界でも活躍している空間デザイナーが手がけたらしい。シェフも有名な人だよ。ただ、この店はふたりからじゃなきゃ利用できなくてね。宇川さんが付き合ってくれてよかった」
「いえ、こちらのほうこそ。お誘いいただいて、こんなにいいお店に連れてきてもらえるなんて」

 私は改めて、ワンピースを選んで正解だったな、と心の中でつぶやいた。

「どのコースにしようか」
「ええと……」

 佐渡谷さんがさりげなくメニューを手渡してくれて、それを受け取った。瞬間、目が点になる。

 た……高い。いや、店を見たときから高級そうな気はしていたけれども!

 私は平静を装って、メニューを順に見ていく。

 基本的にはコース料理っぽい。その中でも四種類のコースがあって、一番安くて七千円。逆に高いものだと二万二千円もする。

 どうしよう。もうコースの内容なんて頭に入らない。こういうとき、どれを選べばいいんだろうか。安価なものを選んだら、逆に失礼になったりするのかな……。

 もちろん、ごちそうになって当然だなんて思っていはいないけれど、一昨日のカフェのときを思い返せば、今回も代金を受け取ってくれなそうな気はするし……。

 ぐるぐると考えを巡らせていると、佐渡谷さんがメニューを置いて笑いかけてきた。

「決まった?」
「……あの……お、お任せします。特に苦手なものもないですし」

 大丈夫。幸いお金も足りる程度にはお財布に入ってるし、どれになっても支払いはできる。

 余計なことばかりが気になって、まったくメニュー内容は二の次だ。
 すると、佐渡谷さんがジッと私を見つめて言った。

「それは俺が好き嫌い多そうってこと?」
「えっ。ち、違いますよ!」

 私は慌てて両手を横に振り、必死に否定した。

 そういえば、佐渡谷さんはカフェでも豆類が苦手って話してたんだっけ。
 意図せず失言してしまった、と狼狽えていると、彼は「ふっ」と目を細めた。

「冗談だよ。じゃあ、俺が頼もうとしてたコースと同じにする? 飲み物は?」
「飲み物も一緒で。佐渡谷さん、お酒飲めませんもんね?」
「宇川さんて、すごく気配りきくタイプだ。でも俺には気遣い不要だよ?」

 彼の眩しい笑顔を直視できず、咄嗟に視線を落とす。

「いえ。もともとお酒はあまり得意ではないですし……」
「そう? だったら、俺はミネラルウォーターを頼むけど、それでいい?」
「はい。料理の味がよくわかりますもんね」

 佐渡谷さんは「さすが」と笑って、ちょうどやってきたスタッフにオーダーを済ませる。
 再びふたりきりになった途端、私の胸は普段と違う鼓動を打ち始める。
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