予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 ふたりで声のしたほうを振り返ると、そこにいたのは綾人だった。


「うちの社長が女性社員を襲ってるって、通報したほうがいい?」

 そう冗談めかして笑う。


「なに言ってるんだ」

 あきれて腕の力を緩めた瞬間、吉木が俺から逃げ出した。


「わ、私はこれで失礼しますっ!」

 叫ぶと同時に全力で走りだす。

「おい、ちょっと待て」

 追いかけようとしたけれど、俺が追ったところで彼女はますます必死になって逃げるだろう。

 そう思い、唇をかみながらその場にとどまる。



「追いかけないから、走るな! 転びでもしたら大変だろ!」

 せめて彼女の後ろ姿に向かってそう怒鳴ったけれど、その姿はあっという間に見えなくなってしまった。


 はぁーっと大きくため息を吐き出し綾人を睨む。

「なんてタイミングで声をかけるんだよ。お前のせいで逃げられたじゃないか」
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