予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 浮かれた甘ったるい声で言われ、俺は眉を上げた。

「お付き合い?」

 冷ややかな口調で問うと、富阪社長が慌てたように口をはさむ。

「いや。そうなったらいいなという希望ですよ。うちの娘はなかなか美人でしょう?」

 たしかに美人ではあるが、自己顕示欲の強そうな表情が鼻につく。

 体のラインを強調した派手なドレスやくどいほどつけられたアクセサリー。
 長くのばした爪はキラキラと光る小さな石で飾られていた。

 その爪を見て、さっき俺のネクタイを直してくれた吉木の指を思い出す。

 頭のてっぺんから足先まで隙なく着飾ったこの女よりも、黒いワンピースに真珠のイヤリングをひとつつけただけの吉木のほうがずっと綺麗だと思う。
 
 そういえば、俺がステージを下りてから吉木の姿を見ていない。
 彼女はどこに行ったんだろう。

「ねぇ、柊人さん。今度一緒にお食事でも」

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