予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 後ろから長い腕がのびてきて、かばうように私の体を抱きしめた。

「危ないだろ!」

 その社長の厳しい表情にはっとする。

 彼の視線の先を見れば、私のひざに赤い血が滲んでいた。

 夢中になっているうちに、割れた湯飲み茶わんの破片を踏んでしまっていたらしい。

「たのむから、無理をしないでくれ。なにかあったらどうするんだ」

 社長は整った顔をゆがませ、懇願するようにつぶやく。

「す、すみません……」

 社長をかばうつもりが、逆に迷惑をかけてしまった。

 自己嫌悪に襲われながら頭を下げる。
 
 その様子を見ていた父が、きつく握っていたこぶしをほどいた。

「もういい」とつぶやく。
 
 そして父は黙ったまま玄関に向かって歩き出す。

「お父、さん……?」
「勝手にしろ」

 戸惑う私を振り返りもせず、そのひと言だけ残し父は部屋を出ていった。

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