予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 ばたんとドアが閉まる音を聞いた瞬間、体から力がぬける。

 私はへなへなと床にしゃがみこみ、放心したように玄関のドアを眺めた。

『勝手にしろ』と言った父の声には、なんの感情も含まれていなかった。

 自分の言うことを聞かない娘なんて必要ないと言われた気がした。
 


 あぁ、これはもう、完全に見放されたんだ。

 そう実感すると同時に、大きな虚無感に襲われる。
 

 小さなころから父は兄ばかりかわいがり、私には厳しかった。

 私なりに頑張っているつもりなのに、いつも理解してもらえなかった。
 
 ずっと心の底にたまり続けた悲しみがこみあげてきて、おえつがもれる。



 私は自分で思っていた以上に、父に愛されたかったんだと気づいた。

「吉木」


 優しい声で名前を呼ばれた。

 大きな手が後頭部を包みそのまま引き寄せられる。

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