予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
「いえ、なにもありません。秘書室内で配置転換があっただけです」
「それでも、一切姿を見かけないのはおかしいと思うが」
「そうですか?」

 辻は涼しい顔ではぐらかす。
 
 彼女は俺より三歳年上で、勤務歴も長いベテラン秘書だ。

 澄ました表情からはなにを考えているのか読み取れなくて、なかなか手ごわい。



「何日か前に、吉木は有休をとっていたよな。病院に行っていたらしいけど、どこか悪いのか?」
「さぁ。私にはわかりかねます」


 なにをたずねてもこの調子だ。

 俺が顔をしかめると、見ていた綾人が「ははっ」と声を上げて笑った。


「そんなに吉木さんが気になるなら、直接本人に聞けばいいのに」

 直接聞けないからこんなにもやもやしているんだよ!と声を荒げたくなる。
 
 吉木のスマホに電話をかけてもつながらないし、社内で姿を探しても見つからない。
 
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