予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
 俺と辻は会釈をして店を出た。



「相変わらず、彼はすごいな」

 なかばあきれながら言うと、辻もくすくす笑いうなずいた。

「社外取締役が仕事にもプライベートにも精力的でお元気なのはよろこばしいことです」
「まぁ、確かにな」

 ロベールは女遊びもするけれど、仕事もできる男だ。

 世界中のファンション界に人脈を持つ、心強い仲間でもある。


「それにしても、社長はあんなに綺麗な女性に誘われても、まったく動揺しないんですね」

 エレベーターを待ちながら、辻がぽつりと言った。

「当たり前だろ。学生のころからあきるほど女に声をかけられてる。いちいち動揺するわけがない」

 そう答え、ふとひっかかる。

 心の中に思い浮かんだのは、涙目でこちらを見上げる吉木の顔だった。



 今まで数えきれないほど異性から口説かれてきた。

 いまさら泣き落としに心を動かされたりしない。


 
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