■王とメイドの切ない恋物語■
「1、2、3~、1、2、3~」



私たちは、星空の下、10分ほど踊った。

「リリア、大分うまくなってきたね」

トーマ様が、踊りながら優しく私を見つめた。



「トーマ様の教え方が上手なんですよ」

あぁ すごい幸せだよ・・

私も微笑んだ。




幸せな時間は、あっという間に過ぎ去った。

「トーマ様、ありがとうございました」

私は深々と頭を下げた。

「いや、私の方こそありがとう。楽しかったよ」

と、トーマ様は笑った。




二人で椅子に座り、休憩することにした。

「星が綺麗ですね」

「そうだな」




まるで、恋人のような会話。

時折吹く風が、心地いい。

こうやって二人で過ごせる時間は、本当に貴重だし、大切にしたい。

私は、幸せを噛み締めた。




しばらくして

「では、そろそろ行くか」

トーマ様が、立ち上がった。

「はい」

すごい名残惜しいけど、私も立ち上がり後に続いた。


その時、

「きゃっ」

もう少しで扉というところで、少しあった段差に、つまずいてしまった。


ころぶっっ



が、転ぶ前にトーマ様がすばやく片ひざをついて、抱きとめてくれた。

ふわっと抱き締められ、心臓が破裂しそうになる。




「あっ ありがとうございます」

私は、あわてて立ち上がろうとする。

でも、トーマ様はまだ、私を抱き締めたままだ。

「え?あの?トーマ様…?」





「リリア…少しこうしてていいか?」

ドクン

私の胸が大きく鳴った。



私は、「はい」と、うなづくだけで精一杯だった。
< 113 / 396 >

この作品をシェア

pagetop