■王とメイドの切ない恋物語■
「何?」


私は、その不気味な笑顔が怖くなり、一歩後ろに後退りした。




その瞬間、私の首に刃物が、あてられる。

「きゃっ!」

思わず、悲鳴をあげた。

「おおっと、お嬢さん。静かにしてもらわないと、困るよ。まだ、全部盗み終わってないんだから」

男はニヤリと笑う。



私は、ゾッとした。

首元で光る刃物を見ると、額に汗がにじんでくる。


まさか、私、殺されたりしないよね…?

「ちょうどいい。ちょっと付き合え。見つかった時の人質になってもらおうか」

人質…?

男に、じろりと見られ、体が硬直するのがわかった。

どうしよう!どうしよう!怖い。

こんな誰もいない所で、こんな怪しい男に声をかけるだなんて、私、どうかしてたよ。


誰か呼んできてから、声をかけるのが常識なのに。

あぁ、馬鹿。

なんてことしたの…



私が、震えながら、うつむいていると、

「ほら、これを持て」

男が盗んだものを、私に渡した。

「早く!」

刃物が更に押し付けられる。

私は、震える手で、受け取った。



誰か…

誰か助けて…
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