■王とメイドの切ない恋物語■
しばらくして、医者が顔を上げた。



部屋に緊張が走る。

「もう大丈夫!傷口は何ヶ所か開いてしまったけど、また、しばらく安静にしとけば、回復するわ」


部屋中に、ドッと歓声が起こった。



「よかったよぉ」

声が震え、涙が、ポロポロこぼれる。

「うんうん」

チチリさんは、私の頭を撫でてくれた。




その時、

バン!

と、部屋の扉が開いた。

エリックが、息を切らして立っている。

「王は!?王は、無事なのか!?」

私は、ゆっくり、頷いた。

「そうか、よかったぁ~」

と、エリックは、その場に座り込んだ。





私は、エリックのそばに歩いていった。

「エリック、本当にありがとう」

「あんた、凄いじゃん!」

チチリさんも笑う。

「いやいや、王が、刃物を叩き落としてくれたから、出来たみたいなもんだよ」

優しい眼差しで、ちらっとトーマ様を見て、

「やっぱ王は、すげえな。あんな体で、よくリリアを助けたよな。愛だねぇー」

エリックは笑った。

「本当、本当」

そう頷くチチリさんも笑顔だった。

< 389 / 396 >

この作品をシェア

pagetop