【短】エリュシオン
そんなやり取りをしながら、目的地の映画館に辿り着く。



もう少し、二人きりでいたかったかも…。


そんなことを思いつつ、繋いでいた手をするりと解いて、バッグからハンカチを取り出した。


「あー…暑かったね」

「そうだね、美緒さん、大丈夫?」

「んー…ココ、涼しいから大丈夫かな。ていうかさ、私より慧くんの方が汗だくじゃん。ほら…」


そう言うと、自分の持っていたハンカチで、無意識に彼の首筋の汗を吸い取った。


「あ…」

「…あ…」


互いに、無意識の行動がキラキラし過ぎてる気がする。


そんなことを彼も思ったのか、少しだけ私たちの間に沈黙という空間が出来た。

でも、それをすぐに私は埋めようと試みる。



「あ!ねぇ、急がないと映画始まっちゃうよ?飲み物とか買って来よ?」

「う、うん!」


そうして、販売店の列に私たちは並んだ。


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