政略妻は冷徹ドクターの溺愛に囚われる~不協和結婚~
「よかった。まるで無反応だから、不感症かと心配していた」
薄い男らしい唇を挑発的に歪ませたかと思うと、たった今自分で見つけ出した部分に、躊躇なく長い中指を沈ませた。
「や、ううっ……!」
ビクンと身を震わせてあげた短い叫びは、男の唇にあっけなく封じ込まれる。
生き物のように動く舌が、口内を蹂躙する。
那智は、くぐもった声を漏らした。
せめてもの抵抗に、生理的な涙が滲む目を開け、男を睨みつける。
(この人が、こんなキスするなんて……)
冷静沈着で、動じる姿を見たこともなければ、想像もできない。
口数は少なく、いつも物静かでクールな男が、今、激しく熱く、自分の唇を貪っている。
那智の茶色くカラーリングしたふわりとした前髪を、サラリとまっすぐ額に落ちる、彼のこげ茶色の前髪が掠める。
その向こうの涼やかな一重目蓋、切れ長の目。
柔らかく目尻を下げ、『微笑む』ことなどあるのだろうか。
鼻筋が通っていて、高く形のいい鼻梁。
顔のすべてのパーツのバランスがよく、整った顔立ちのイケメンなのに、残念なほど表情は乏しい。
顔面筋肉を無駄にしているとしか思えない、涼し気な無表情が彼の常。
薄い男らしい唇を挑発的に歪ませたかと思うと、たった今自分で見つけ出した部分に、躊躇なく長い中指を沈ませた。
「や、ううっ……!」
ビクンと身を震わせてあげた短い叫びは、男の唇にあっけなく封じ込まれる。
生き物のように動く舌が、口内を蹂躙する。
那智は、くぐもった声を漏らした。
せめてもの抵抗に、生理的な涙が滲む目を開け、男を睨みつける。
(この人が、こんなキスするなんて……)
冷静沈着で、動じる姿を見たこともなければ、想像もできない。
口数は少なく、いつも物静かでクールな男が、今、激しく熱く、自分の唇を貪っている。
那智の茶色くカラーリングしたふわりとした前髪を、サラリとまっすぐ額に落ちる、彼のこげ茶色の前髪が掠める。
その向こうの涼やかな一重目蓋、切れ長の目。
柔らかく目尻を下げ、『微笑む』ことなどあるのだろうか。
鼻筋が通っていて、高く形のいい鼻梁。
顔のすべてのパーツのバランスがよく、整った顔立ちのイケメンなのに、残念なほど表情は乏しい。
顔面筋肉を無駄にしているとしか思えない、涼し気な無表情が彼の常。