政略妻は冷徹ドクターの溺愛に囚われる~不協和結婚~
『お前は今日から俺の妻。初夜を拒むとは、どういう無礼だ』
彼の言う通りなのは、那智も重々承知している。
那智は、都内でも有数の大病院、赤城総合病院院長の一人娘だ。
病院が誇る、世界でも屈指の若き天才麻酔科医、五歳年上の蓮見暁と、この週末に入籍したばかり。
二十九歳の誕生日を迎えた今日、新居への引っ越しを済ませ、新婚生活を開始した。
そして、今夜は、結婚初夜――。
本来、妻になった彼女が、彼との行為を拒める道理はなかった。
結婚は悪夢のようでも、逃れようのない現実には違いない。
那智は、覚悟を決めたつもりでいた。
だけど、いざベッドに組み敷かれると、愛していない男に抱かれることを、本能が拒否した。
この土壇場で怖気づいてしまった理由は、彼女自身が一番よくわかっている。
「……聡志」
那智は、ほんの一月前に別れた恋人の名を呟いた。
柏崎聡志。
彼もまた、赤城総合病院に勤務する、三十一歳の心臓外科医だ。
那智は、医療事務員として入職して三年目の頃、まだ研修医だった彼と付き合い始めた。
小さな喧嘩は数え切らないくらいしたけど、交際は総じて順調。
ゆっくり愛を育む中、聡志は研修医課程を終え、心臓外科医として立派に独り立ちした。
彼の言う通りなのは、那智も重々承知している。
那智は、都内でも有数の大病院、赤城総合病院院長の一人娘だ。
病院が誇る、世界でも屈指の若き天才麻酔科医、五歳年上の蓮見暁と、この週末に入籍したばかり。
二十九歳の誕生日を迎えた今日、新居への引っ越しを済ませ、新婚生活を開始した。
そして、今夜は、結婚初夜――。
本来、妻になった彼女が、彼との行為を拒める道理はなかった。
結婚は悪夢のようでも、逃れようのない現実には違いない。
那智は、覚悟を決めたつもりでいた。
だけど、いざベッドに組み敷かれると、愛していない男に抱かれることを、本能が拒否した。
この土壇場で怖気づいてしまった理由は、彼女自身が一番よくわかっている。
「……聡志」
那智は、ほんの一月前に別れた恋人の名を呟いた。
柏崎聡志。
彼もまた、赤城総合病院に勤務する、三十一歳の心臓外科医だ。
那智は、医療事務員として入職して三年目の頃、まだ研修医だった彼と付き合い始めた。
小さな喧嘩は数え切らないくらいしたけど、交際は総じて順調。
ゆっくり愛を育む中、聡志は研修医課程を終え、心臓外科医として立派に独り立ちした。