イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「だけど、一つだけ方法がある」

「それがさっきおっしゃっていた、神谷さんが私の彼氏になる……ですか?」

「正確にいえば、結婚を前提として付き合っている恋人」

何気にさらっといっているが、なぜ自らそんなことを言い出すのか、わけがわからない。
驚く私を他所に専務は話を続ける。

「俺の名をあげれば、見合いを断っても文句はいえないだろ」

確かに父の上司より東栄テックの専務のほうが格段に上だ。でもそれはあくまで見合いを断るための彼氏であって、実際の彼氏ではない。
もし私が専務にお願いしたとしても、縁談を断るまでの期間限定だ。
だけど断る理由として、両親に専務が恋人です。なんていったら両親、特に母なんて飛び上がって喜んでしまう。
喜びすぎて知り合いに言いふらして、結婚式場とかも勝手に予約をいれる。
母ならやりかねない。
断った後のことを想像したら、とてもじゃないが無理だ。

「お気持ちはありがたいのですが、お断りします」

「なんで?」

断ることがおかしいとでも言いたげな目を向ける専務。

「彼氏になってもらうのは縁談を回避するためです。結果的には親を騙すことになると思ったら……」

だが専務から意外な返事が返ってきた。

「そう? 君次第なんじゃないの?」

私は専務の言っている意味が全く理解できなかった。君次第ってどういうこと?

「それは——」

「で? どうするんだ? 君は俺の提案を断り、このポッチャリくんとお見合いして、気に入られ、いずれ結婚するか、それとも俺の提案を受け入れ縁談を回避するか」

お見合いの画像を見れば見るほど、お見合いをする気が失せるけど、必ずしも私が相手の人に気に入られるとは限らない。それに専務の提案を受けいることに躊躇してしまう理由はべつにある。
こうなればお見合いで思い切り嫌われる様な態度を取れば気に入られることはない。

「それでも私は——」

専務の提案をお断りしようとした時だった。
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