イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「もしかして自分で回避できると思ってる? 恐らく君は嫌われる様な態度を取れば、なんとかなるだろうとおもっているだろう。だが君のその真面目な性格を考えたら、それはできない」

「そんなこと——」

「君は今回の縁談話が来た時だって断れなかった。それは両親の立場を考えたからだ。きっと君はお見合いを回避することなんかできない。それともこの彼と結婚したいというのなら話は別だけどね」

今の私には結婚なんて考えられない。

結婚よりもまずは一度ぐらい誰かを好きになって、恋愛してみたい。

「この方と結婚するつもりはありません」

「だったら、俺が協力するって——」

「それはできません」

「なぜ?」

そんなのきまってるじゃない。

「だって……先生だから」

いくら相手が先生をやめた上司でも、私にとっては先生だ。
結局のところ、断る理由の一番は、専務が先生だからなのだ。
でも専務はそうではなさそうで……。
きょとんとした顔をしたかと思ったらゲラゲラ笑い出した。

「な、何がおかしいんですか? だって私にとってはまだ上司というより先生という言葉の方がしっくりくるというか、そもそも先生が私の彼氏役って……なんか悪いことしてるみたいじゃないですか」

早口で捲し立てる様にいうと、専務が更に笑う。

何がそんなにおもしろいの? それとも私をからかってるの?

「ごめんごめん。相変わらず真面目だな〜って思って」

「真面目の何が悪いんですか?」

「悪いなんていってない。でも俺は君を元生徒だなんて思ってないよ」

「え?」

「一人の女性として見てる」

「で、でも私には先生っていうイメージしかないというか……だから」

すると専務が立ち上がった。

「あ、あの?」

呆れてもう帰るのかと思い、立ち上がるとするとなぜか専務は私の顎に手をかけた。

「せ、専務?」
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