イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
専務は私をじっと見つめると、観念したかのように息を吐いた。
「分かったよ。ほんとうのことをいう。君が好きだ」
う、嘘でしょ?
「冗談はよしてください」
「冗談ではない。嫌いなら君を秘書にしなかったし、恋人役だって引き受けなかった」
引き受けたじゃなくて自分から志願したのでは? と言い返したいところだけど、今はそんなことより専務の気持ちの方が重要だ。
「結婚したいほど私が好きということなんですか?」
「それは君次第だよ」
「え?」
何この丸投げ的な言い方。
こんな展開どの恋愛漫画にもないタイプだ。
「あの……先ほどの塩原社長のお話というのは」
話を戻すようだが、肝心な経緯がわかっていない。
「ああ、あれね」
二週間ほど前に、商談のためにMメディックの本社に行った時、偶然塩原社長のお嬢様が社長室に忘れ物を届けにきていたらしく、お嬢さんの紗季さんと挨拶を交わした。
その後彼女は帰り、専務は塩原社長と商談をしていたのだが、その数時間後。
塩原社長から電話が入り、「娘が君のことを気に入ってしまったらしく、もし君にそういった相手がいなければ娘と一度会ってやってくれないか?」と言われたというのだ。
この時は「考えてみます」と言葉を濁したものの、一週間後に再び催促というのだろうか
「娘からの催促がしつこくて、悪いが時間を作ってくれないか?」と懇願されてしまったのだ。
だけど、偶然にも大口の取引が決まって、仕事が立て込んでいた専務は、一週間時間をくださいと返事をした。
そしてまさに今日がその一週間後だった。