イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎
「私を専務の秘書に抜擢したのも、このことがあったからですか?」

専務は私を見つめ「運命かな?」と言って微笑んだ。

「運命?」

「そう、運命。俺が数学を教えていた生徒が、偶然にも俺の父の会社に入社。そして十年も満たない間に君は学生から女性へと成長し、俺の前に現れた。最初はびっくりしたよ。
なんでここにいるのかって。でもこれは運命だって気づいたんだよ」

確かに私は専務、いや神谷先生のご実家がこの会社を経営しているなんて全然知らずに入社した。
本当に専務と再会するまでは。
専務は話を続ける。

「ただ君の縁談を知り、あんな男とお見合いして欲しくないと思ったら恋人役に志願していて……。君のことを好きだって気づいたんだ。今日君を呼んだのも、、塩原社長の前で宣言することで君に俺をもっと意識して欲しいと思ったからだ」

どうしよう。
ドキドキして胸が痛い。でも苦しい痛みではなく。なんていうんだろう。
きゅんとする痛み?
運命とか意識して欲しいとか……言われて悪い気は全くしない。
もちろんとそれ以上に戸惑ってる。専務とは再会してまだ日が浅すぎる。
そんなに人ってすぐに誰かを好きになるものなのかって……。
でも全く受け入れられないわけではない自分がいた。

「専務」

「何?」

「運命ってよくわかりませんが、こうやって再会したのは何か意味があるからだっていうのはわかる気がします。ただ、私は愛とか恋とかよくわかんないし、専務のことを好きかと聞かれても答えられません。だから」

「だから?」

「塩原社長の前で私を婚約者だと紹介した以上、責任持って私の気持ちを専務でいっぱいにさせてください。じゃないと結婚とか無理です」

「それって俺が君を惚れさせるってこと?」

「はい」

専務は満面の笑みを浮かべると「臨むところだ」と言った。
勢いでこんな展開になってしまった。
だけどこの上から目線な要求に翻弄させるとはこの時の私は何もわかっていなかった。
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