イジワル御曹司は偽のフィアンセ様❤︎

「君のご両親にはこのように説明しておけば大丈夫だろう」

そこに書いてあった内容はこうだ。
私と専務は３ヶ月前から付き合っている。
だけどそのことを言えなかったのは、そのお相手が自分の会社の専務で、将来のことを話したわけでもなかったか縁談話が来ても彼のことを何も言えなかった。
だけど、昨日その彼からプロポーズされて……だから

「お見合いできない。お母さん断っておいて……っていうんですか？」

「そうだけど、今の棒読みじゃ、嘘っぽいからもっと感情込めて」

「あの……」

「なんだ？」

「これ専務が考えたんですか？」

すると専務の顔がほんの少しだが赤くなっているのがわかった。

「俺以外誰が考えるんだよ……って今笑ったな？」

この文面を専務が一生懸命考えているのを想像したら、ちょっと可愛いなって思ってしまった。

「わ、笑ってません。よく考えたなと感心してるんです」

だけど専務は私の言葉を信じていないようだ。

「とにかく、この通りに言って日曜日に俺が君の両親にあいさつに行く。わかったな」

「は、はい」

でもこんなので大丈夫なのだろうか。
だって実際に両親に会ったとき、恋人として接することができるとは思えない。
それに、うちの母は意外に人間観察っていうのかな。相手の心を読むというか、とにかく敏感。

「あとは君次第？」

「え？」

「今だってよそよそしいのに、ご両親の前でラブラブっぷりを発揮できるのかな？　と思ってね」

私の一番危惧していることを……。

「尽力します」

としか言えないでしょう。

「じゃあ、早速尽力してもらおうか」

「はい？」

「そこの扉の中に今から着ていくスーツが入っている。とってくれ」

「はっ、はい」