契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「だからそういうのが、余計なことだって言ってるの」

「なんですか? 先輩、どいてください」

 そんなやり取りをしている間に、いつのまにか打ち合わせを終えた男性ふたりがオフィススペースに戻ってきた。

「あ、おつかれさまです。今、コーヒーのお代わりをお持ちしようかと思っていたんですが…」

 晴香がふたりに声をかけると、田所が嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう、このままいただくよ」

 そして、適当な椅子に腰掛けてコーヒーを手に取ると、砕けた調子で孝也に向かって問いかけた。

「そういえば副社長、お盆休みは取れそうですか」

 孝也もコーヒーを手に適当な椅子に座る。そして苦笑しながら頷いた。

「なんとかね。…そのために、ここのところ働きづめだったけど」

 『セントラルホーム』のお盆休みは毎年大体水木の休みを繋げて一週間ほど。その間、全店舗が休みになるから社員は皆問題なく休むことができる。だが役員となると話は別なのだろう。
 なるほど孝也が最近忙しくしていたのはお盆の休みを取るためだったのだと晴香は密かに納得をする。
 田所が孝也と同じく苦笑して、再び尋ねた。

「どこかへ行かれるんですか」

 七瀬が、孝也の答えを耳をダンボにして待っている。
 孝也は少し考えて、ちらりと晴香の方を見てから口を開いた。
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