契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 港店を訪れたその日の夜も孝也の帰りは遅かった。付き合いで飲んで帰るという日は、大抵晴香は先に休む。でも今夜は、どうしてもひとこと言いたくて、起きて彼を待っていた。
 幸い明日からは一週間の夏季休暇、少しくらい夜更かしをしても大丈夫。
 その彼が帰ってきたのはちょうど午前零時を回った頃、晴香はお風呂に入りすっかり寝支度を整えて寝室にいたが、リビングの物音に気がついて、ドアから顔を出した。

「おかえりなさい」

 声をかけると孝也は少し意外そうに晴香を見た。

「ただいま、…起きてたの」

 そしてジャケットをソファに放り投げて、自身もそこに身を沈めると、ふぅーと長いため息をついた。
 晴香の胸がツキンと痛む。
 やはりここのところの激務には彼もかなりの疲労を感じているようだ。お昼に平気そうにしていたのは他の社員がいたからだろう。
 不動産業の世界は人脈も大切だ。だから彼の立場だと、会社の可能性を広げるために、付き合いは疎かにはできない。飲みの予定ひとつとってもそれは仕事と同等の意味をなす。
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