契約夫婦の蜜夜事情～エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない～

　まるで父親みたいなことを言う孝也に晴香は首を横に振った。

「大丈夫よ。それに明日からお休みなんだし」

「まぁ、そうだけど。でもどうして起きて待ってたの？　なにか俺に言いたいことでもあった？」

　そう言ってニヤリと笑う孝也に、晴香は急に昼間のことを思い出した。
　そうだ昼間のことを注意しようと思っていたんだと晴香が孝也を見ると、彼は晴香の言いたいことなどお見通しだとでも言うように、ソファの背もたれに両手を広げて余裕の表情で晴香の言葉を待っている。

「昼間に…、どうしてあんなこと言ったのよ」

　晴香は少し憮然とする。

「…あんなことって？」

　孝也が眉を上げて聞き返した。
　わかってるくせに…と晴香は孝也を睨んで言葉を続ける。

「彼女がいるとか、プロポーズを保留にされてるとか…。あのあと大鳥さん騒いじゃって、大変だったんだから」

　本当ならこんなつげ口みたいなことはしたくない。でも実際、ちょっと困ったことになっているのだ。

「彼女、早速同期のグループラインに報告してた。本社の子たちもたくさん登録しているグループらしいから、きっともう会社中に知れ渡ってる」