契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「でもいったい、どうやって丸め込んだんだ? 姉ちゃんはお前の気持ちを知ってるのか?」

 真っ直ぐな健太郎の視線が晴香のものと重なって、孝也は罪悪感を感じながらゆっくりと首を振った。

「それは、まだ。けどもうそれも終わりにするよ。茶番はやめて、俺の気持ちもちゃんと言おうと思う」

 友達同士で結婚をしようなんて話を持ちかけたのは、どうしても晴香と一生を共にしたかったから。それができるならば、たとえそこに恋愛感情がなくても構わないとすら思うほどに。
 三年前にどうやら晴香に彼氏ができたらしいと健太郎に聞かされた時は、心が凍りつくような感覚を味わった。晴香が自分ではない誰かのものになるなど耐えられないと心が嘆き悲しみ、血を流した。
 幸いにしてその付き合いが終わりを迎えたと知った時はどれほど安堵したことか。
 そして孝也は決意したのだ。
 どんな手段を使っても必ず晴香と結婚すると。
 もともと臆病なところがあった晴香はその恋人と別れたあと、ますます恋愛に消極的になっていたから、孝也はこれ幸いと綿密に計画を練った。晴香が自分に恋愛感情を抱いていなくても結婚を承諾するであろう計画を。
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