契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 人間というのはどこまでも欲深いものなのだ。
 もちろん、真面目で責任感の強い彼女だから、"子作りのため"などもっともらしい理由をつければ、そういう行為にも応じるだろうとは思ったが、それではもはや満足できそうになかった。
 晴香の心もほしい。
 そしてなによりも彼女に少しでも無理をしてほしくなくて、孝也はゆっくりと、慎重に、彼女が孝也のことを男として見られるように距離を縮めてきた。
 夢にまでみた晴香の肌と唇の感触につい夢中なってしまって、少々暴走してしまう時はあるものの、それは今のところいい効果を生み出しているように思う。孝也の考えが正しければ、晴香は夫婦の触れ合いを嫌がってはいない。
 それどころか…。
 孝也が触れると、戸惑いながらも染まる肌、堪えきれずに漏れる吐息、今までとは違った色を浮かべて自分を見つめる潤んだ瞳…。
 本当の夫婦になろうと告げると、少し驚いたように目を見開いて、それでも真っ赤になって頷いていた。その仕草に、孝也はすぐにでもその場で彼女を押し倒して、モノにしてしまいたい衝動に襲われた。
 自分とまったく同じ気持ちでなくても、少しでも自分を異性として受け入れてくれるなら…。
 でもそれは彼女に本当のことを告げてからだと孝也はなんとか自分の中の獣を鎮めた。
 今の晴香ならきっと、孝也の想いを受け止めてくれるだろう。
 明後日からのふたりきりの旅行、そこで自分の想いを打ち明けよう。
 そして心も通じ合う本当の夫婦に…。
 そう孝也は決意して、残りのビールを飲み干した。
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