契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「休みは嬉しいけどべつに何かするわけなじゃないし暇だなーって思ってたら、けんちゃんがお義姉さん達が帰ってきてるっていうじゃないですか! だったら遊んでもらわなくちゃって思って」

 そう言ってニカッと笑う美紀に晴香はまたくすくすと笑った。
 美紀とは中学のブラスバンド部の先輩後輩という仲だが、当時はそれほど親しくはなかった。
 高校も、健太郎と付き合い始めたと聞いた時に同じところに入学したのだと気がついたくらいだ。
 でもそこからはずっと仲良くしている。健太郎は学生時代ずっと剣道に夢中で、デートらしいこともなかなかできない生活だったから、晴香は美紀の愚痴をよく聞いたものだ。
 彼女が健太郎と結婚をして義理の姉妹になってからも関係は良かったが、お節介な親戚が美紀に『小姑が実家にいたんじゃ、美紀ちゃんもやりにくわね』なんて吹き込んで、互いに気まずい思いをしてから、なんとなくふたりで会うことはなくなっていた。
 晴香はそれを密かに寂しいと思っていたから、こんな風に気軽に会いに来てくれたのが、本当に嬉しかった。
 そしてそれは、おそらくは孝也との結婚のおかげなのだ。
 プロポーズを受けた直後はメリットがあるだろうということはわかっていても、どこかぼんやりとしたものだった。でもこうやって現実のものとして現れてくると、改めてこの結婚は正解だったのだと晴香は思う。
 梨乃が言った『みんなに祝福される結婚がいい』という言葉の意味はこういうことなのだろう。

「それにしても今年の夏休みは暇だったぁ。けんちゃんがうまく休みを取れるかわからなかったから、どこにも予約は取れなかったし。同窓会もなかったし…」
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