契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「はい。三年前くらいだったかな? 同窓会で元カノのひとりが酔った勢いで聞いたんです。本当は別に好きな人がいたんでしょう?って。もう時効だからおしえてほしいって。…ふふふ、女の子の方はたぶん全然時効じゃなかったんだろうけど、久我君の方はそれもそうだと思ったのか、その時は素直に頷いたらしいんです。『実はそうだったんだ。ごめんね』って。その子は、その好きな人とはどうなったんだって聞いたんです。そしたら…」

「そしたら…?」

 晴香は掠れた声で美紀に話の続きを促した。
 聞きたくない聞いちゃいけないと、もうひとりの自分が一生懸命に止めるのに、一方でどうしても続きを聞きたいという自分もいて。
 美紀がそんな晴香に答える。

「『実はまだ好きなんだけど、もういい加減諦めなきゃいけないかも』なんて言ったもんだから…女の子たち大騒ぎになっちゃったんですよ。久我君っていつもどこか飄々としててそこがカッコいいって言われてたんだけど、その時はびっくりするくらいつらそうだったんです。本当に失恋しちゃったみたいな感じで。…それからですよ、頻繁に同窓会が開催されるようになったのは。噂の人が誰だったのかは結局わからないままでしたけど、失恋したって本人が言ったんだから他の子にとってはチャンスありですからね」

 話し終えて美紀がチューハイで喉を潤すのを見つめながら、晴香はあまりに予想外な孝也の過去に相槌を打つのも忘れてビールのグラスを握りしめていた。
 知らなかった。
 孝也にそんな過去があったなんて。
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