契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
哀しい新婚旅行

哀しい新婚旅行

 孝也には長年想い続けた女性がいるという突然知ってしまった事実は、晴香の胸に重くのしかかった。
 きっと孝也はまだその人を愛している。
 だからこそ晴香に、友達同士で結婚しようなんていう突拍子もない話を持ちかけたのだ。
 もちろん独身のまま、その人を想い続けてもよかっただろう。今の時代、結婚は個人の自由なのだから。
 だが孝也が『セントラルホーム』の副社長である限り、ことはそう簡単ではない。
 不動産業界では既婚であることが一種のステータス。地元でトップを走る企業の次期経営者である彼が、いつまでも独身というわけにはいかない、ということなのだろう。
 晴香はプロポーズの時の彼の言葉を思い出していた。

『晴香のことはよく知っている。真面目で…』

 晴香の胸がずきんと痛む。
 また呪いにかかったような気分だった。
 三年前に本気で愛した男性は、真面目な晴香を選んではくれなかった。一方で孝也の方は、真面目な晴香がいいと言ったのだ。
 簡単には変えられない自分の性分を認めてもらえたような気になって結婚を承諾したけれど、考えてみればそれは愛のない結婚だったから。
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