契約夫婦の蜜夜事情～エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない～

　自分は、結局は誰にも愛してもらえないのだ。
　おそらくは、このままずっと…。
　わかっていたことだ、と晴香は自分に言い聞かせる。
　そんなこと、はじめからわかっていた。愛情以外はすべてそろっている結婚だとはっきり彼は口にして、晴香はそれに同意した。
　それなのにこんなに胸が痛むのは、すべて晴香自身の問題。孝也の方のスタンスは初めから何も変わっていないのだから。
　こんなに胸が痛むのは、晴香が孝也を好きになってしまったから…。
　忘れよう、と再び自分に言い聞かせる。美紀の話は聞かなかったことにして、今まで通り幸せな夫婦を演じよう。
　孝也は晴香を愛してはいないけれど、＂愛してないのだ＂という風には扱わない。愛し合って結婚した妻のように大切にしてくれている。
　その彼の期待に、自分は応えなければならない。それが、今から思えば無謀な結婚を承諾した、自分に課せられた義務なのだから…。