契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
いくら近場だとはえ、ここはプレ新婚旅行なんかにしてはもったいないくらいに贅沢なホテルだ。それこそ本当の新婚旅行だったとしても、晴香なら躊躇するレベルかもしれない。
「そう、ここのオーナーと知り合いなんだよ。本当はうちの社長にどうですかって話だったんだけど。社長が譲ってくださったんだ。新婚旅行にどうだって」
まさか社長が譲ってくれた部屋だなんて、晴香はびっくり仰天してしまう。
でもそういう話なら、この部屋の贅沢さには納得がいくとも思った。
「ねぇ、晴香はどこに行きたい? 本当の新婚旅行は」
なおもそんなことを言う孝也に晴香は慌てて首を振った。
「こ、ここで十分よ! …私にはもったいないくらい。それに二回もなんてせっかく譲って下さった社長に申し訳ないわ」
孝也がくすりと笑って目を細めた。
「真面目だなぁ、晴香は」
おそらくはなんの裏もないはずの孝也の言葉に、晴香の胸がツキンと鳴る。そして頭の中でもう一人の自分が呟く声が聞こえた。
だって孝也は、私が真面目だから結婚したんでしょう?
「大丈夫だよ。社長だってこれが本当の新婚旅行だなんて思ってないさ。今は夏季休暇なんだから。でもここみたいなリゾートがいいなぁ、俺。晴香と何もしないでのんびりしたい」
真面目な私と?
そんなのつまらないんじゃない?
また声が聞こえて、晴香は思わず目を閉じる。どうにも頭の中の卑屈な声を制御することができない。
あの話は忘れようと心に決めたというのに。
晴香は深呼吸をひとつして、呪文を唱えるみたいに心の中で繰り返す。
孝也はこんなにも上手に、私を愛しているフリをしてくれている。
私もそれに応えなきゃ。
あの話は、胸に閉じ込めて。
「晴香? 大丈夫?」
黙り込んだ晴香を孝也が心配そうに見つめている。
晴香は慌てて首を振って、無理やりに笑みを浮かべた。
「う、うん、大丈夫。でも、ちょっと車に酔ったのかも」
孝也がまた心配そうに眉を寄せた。
「少し横になる?」
どこまで彼は優しいのだろう。
これでは本当に愛されているのだと、勘違いしても仕方がないじゃないないか。
いっそのこと、冷たくされた方がマシなのかもしれない。
晴香はかぶりを振って笑みを浮かべた。
「大丈夫、大したことないから」
「そう、ここのオーナーと知り合いなんだよ。本当はうちの社長にどうですかって話だったんだけど。社長が譲ってくださったんだ。新婚旅行にどうだって」
まさか社長が譲ってくれた部屋だなんて、晴香はびっくり仰天してしまう。
でもそういう話なら、この部屋の贅沢さには納得がいくとも思った。
「ねぇ、晴香はどこに行きたい? 本当の新婚旅行は」
なおもそんなことを言う孝也に晴香は慌てて首を振った。
「こ、ここで十分よ! …私にはもったいないくらい。それに二回もなんてせっかく譲って下さった社長に申し訳ないわ」
孝也がくすりと笑って目を細めた。
「真面目だなぁ、晴香は」
おそらくはなんの裏もないはずの孝也の言葉に、晴香の胸がツキンと鳴る。そして頭の中でもう一人の自分が呟く声が聞こえた。
だって孝也は、私が真面目だから結婚したんでしょう?
「大丈夫だよ。社長だってこれが本当の新婚旅行だなんて思ってないさ。今は夏季休暇なんだから。でもここみたいなリゾートがいいなぁ、俺。晴香と何もしないでのんびりしたい」
真面目な私と?
そんなのつまらないんじゃない?
また声が聞こえて、晴香は思わず目を閉じる。どうにも頭の中の卑屈な声を制御することができない。
あの話は忘れようと心に決めたというのに。
晴香は深呼吸をひとつして、呪文を唱えるみたいに心の中で繰り返す。
孝也はこんなにも上手に、私を愛しているフリをしてくれている。
私もそれに応えなきゃ。
あの話は、胸に閉じ込めて。
「晴香? 大丈夫?」
黙り込んだ晴香を孝也が心配そうに見つめている。
晴香は慌てて首を振って、無理やりに笑みを浮かべた。
「う、うん、大丈夫。でも、ちょっと車に酔ったのかも」
孝也がまた心配そうに眉を寄せた。
「少し横になる?」
どこまで彼は優しいのだろう。
これでは本当に愛されているのだと、勘違いしても仕方がないじゃないないか。
いっそのこと、冷たくされた方がマシなのかもしれない。
晴香はかぶりを振って笑みを浮かべた。
「大丈夫、大したことないから」