契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 逞しい孝也の肩に掴まる手に力を込めて、晴香はなんとかその感触に耐える。ただほんの少し触れられているだけなのに、こんなにも反応してしまう自分が恥ずかしくてたまらない。
 孝也への気持ちが漏れてしまわないように晴香は一生懸命に唇を閉じる。

「俺、晴香のポニーテール、好きだったな」

 それなのに、また甘い言葉を囁かれて、晴香は自分がどうにかなってしまいそうだと思う。同時に自分はとても難しいことを要求されているのだと思った。
 こんなに甘く囁かれて、まるで愛おしむかのように触れられて、それでも好きになってはいけないなんて。
 孝也の手は、うなじを辿り赤く染まった耳を摘む。そして、親指と人差し指ですりすりと擦り合わせるように優しく晴香に刺激を送った。

「んっ…!」

 ぴくんと肌を震わせて、晴香はまた唇を噛む。不安定な水の中で身体が沈んでしまわないように一生懸命彼にしがみついた。

「ダメ…、孝也」

 これ以上、そんな風に触れないで。

「晴香、…いや?」

 晴香はふるふると首を振る。
 嫌だなんて思わない。
 そうじゃなくて。
 こんな風に触れられて、本当の気持ちを隠し通せる自信がない。
 だって孝也は、私が好きだなんて言ったら困るでしょう?
 けれどもちろん、そんな言葉は口にはできない。ただ潤んだ瞳で懇願するように彼を見つめるのみである。
 そんな晴香を、孝也はさらに追い詰める。

「いやじゃないなら、やめない。だって晴香、いきなりは怖いんだろう? こうやって少しずつ慣らしておかないと」

 その言葉の意味を晴香はすぐには理解できない。
 首を傾げる晴香の耳に、孝也がかぶりついた。

「きゃっ! あああ…!」
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