契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「あいつら本当に怖かったんだから、バレたら姉ちゃんただじゃすまなかったぜ? 寄ってたかって袋叩きにあってもおかしくはなかった」

 健太郎の言葉に晴香はまた首を傾げる。だからどうして孝也の好きな人がバレたからって晴香が袋叩きにあうというのだろう。
 あいかわらず健太郎の言うことはよくわからない。
 またもや首を傾げる晴香に、美紀がもう我慢できない!というように声をあげた。

「やっぱり、久我君の噂の人はお姉さんだったんですよ! だから言ったじゃないですか!!」

 美紀の言葉に、晴香は目を見開いた。
 え?!まさか!
 そんなわけないと思いながら健太郎に視線を移すと、彼はニヤニヤとして意味ありげに晴香を見ている。
 …本当に?

「けんちゃんは、久我君のためだけじゃなくてお姉さんのためにも黙っていたってことね」

 美紀が感心したように言う。
 健太郎が頷いた。

「やっぱり実の姉がそんな風になるのは忍びないからな。俺が犠牲になればいいんだって思って。でもそういえば孝也にも感謝してもらってないな、俺」

「ふふふ、じゃあ今度何かご馳走してもらわなくちゃ」

 ふたりで視線を合わせて笑い合う彼らを見つめながら、晴香はただ唖然としてしまっていた。
 だってそんなこと、信じられない。

「孝也はなんにも言わなかった…」

 呟くように晴香は言う。
 弟のような存在としてずっとそばにいて、たくさんいろんな話をしたのに、彼はひとこともそんなことを言わなかった。
 健太郎がそんな晴香を見て呆れたような声を出した。
< 167 / 206 >

この作品をシェア

pagetop