契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「孝也、大好き。大好きなの、愛しているの」

 ほとんど叫ぶような晴香の声に、彼の反応はすぐにはなかった。
 こんなところまで来ておいて、いきなりなにを言うのだと、呆れたのかもしれないと晴香は思う。今更だと思われているのかもしれない。
 それでも晴香は、胸の中にある彼への想いを繰り返し繰り返し口にした。
 大好きなの、愛してるのと。

「は…晴香…?」

 孝也がようやく声を発した。そして胸にくっついたままの晴香に、信じられないというように掠れた声で問いかけた。

「…本当に?」

 晴香は孝也の胸に顔を埋めたまま、言いたかった言葉を口にする。

「あの夜、拒否してしまってごめんなさい。私、怖かったの。孝也を好きな気持ちはどんどん大きくなるのに、孝也の気持ちがわからなくて。私はこんなに愛しているのにあなたに愛されないまま抱かれたら心が壊れてしまいそうで、怖くて…」

 孝也の喉がごくりと鳴る。
 晴香は首を振って言葉を続けた。

「私…私弱虫だから、怖かった。結婚してからずっと怖かったの。恋愛感情なしで結婚しようって決めたのに、孝也のこと、どんどん好きになるんだもの。この気持ちを孝也に知られたらこの結婚はダメになってしまうんだって思ったら絶対に隠し通さなきゃって思って、それで…!?」
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