契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 どうしたのかと尋ねてみれば、

『初めて晴香を抱く時はもっと優しくするはずだったのに』

と呟いてそのまま自己嫌悪に陥っている。そんな姿はとても会社で尊敬を集める失敗知らずの副社長とは思えなくて、晴香は笑いが止まらなくなってしまったのだ。

「私は大丈夫よ?」

 慰めるつもりでそう言うと、孝也は顔を上げてじろりと晴香を睨んだ。

「俺は晴香を大切にしたいんだ。少しも嫌だと思うことはしたくないんだよ。それなのに、晴香があんな風に…もう、あんな風にされたら…さすがに理性がもたないよ。突然だったし」

 そう言って孝也は情けないようにため息をつく。その姿に晴香は胸に温かいものが広がるのを感じていた。
 彼はいつも晴香を大切にしてくれた。
 そうそれは今だって。
 だからこそ彼に罪悪感を持って欲しくなくて晴香は迷いながら口を開く。

「孝也、私本当に大丈夫よ。嫌なことなんてひとつもなかった…すごく、すごく幸せだった。だって…」

 でもそれ以上は言葉にできずに晴香はうつむき頬を染める。どう伝えるのが正解なのかがさっぱりわからなかった。
 けれど本当に今まで生きてきた中で一番幸せな時間だったと心から思う。
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