契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「い、言ってくれればよかったのに。それなのに友達のまま結婚しようなんて変なこと言うから、それでややこしくなったんじゃない」

 晴香は頬を膨らませる。
 すべてはあのプロポーズの夜、晴香が孝也にも恋愛感情がないのだと勘違いしたことから始まったのだ。
 孝也がやや大げさにため息をついた。

「じゃあ晴香に聞きたいんだけど、あの夜俺が好きだから結婚しようって言ってたら晴香は素直に承諾した? いきなり結婚じゃなくても付き合おうって言ったらどうだった?」

 晴香は「え」と呟いて黙り込んでしまう。孝也が畳み掛けるように言葉を続けた。

「晴香、完全に俺のこと弟としてしか見てなかっただろう? 突然俺が晴香を女として見てるなんて知ったら、きっと怖くなって今まで通りの付き合いもできなくなったんじゃないかな。結婚なんてもってのほかだ」

 言われてみればその通り。
 あの夜、もし孝也に気持ちを打ち明けられていたら、すぐには受け入れられなかったに違いない。
 もしかしたら、今孝也が言ったとおり、彼を怖いと思ってしまったかも…。
 視線を落として黙り込む晴香に、孝也は「ほらね」とでもいうような視線を送って、また大きくため息をついた。

「だ、だったら!」

 思わず晴香は声をあげた。 

「だったら、ちょっとずつ、それとなくわかるみたいにしてくれたらよかったのに…結婚してからしてくれたみたいに」
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