契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 広子がエプロンで手を拭きながら出てきた。そして、にっこりと微笑んで頷いた。

「大丈夫よ、孝也君の紹介なら安心だわ。姉弟ふたりしてお世話になるみたいで申し訳ないけど」

「お世話なんて、大袈裟なことじゃないよ。俺だって、この家には散々お世話になったんだ。できるだけのことはさせて」

 孝也の言葉に、広子はうっすらと涙を浮かべている。
 そんな母に晴香は胸が締め付けられるような気持ちになった。自分がアラサーになったということは、母だって同じように歳をとったということなのだ。そして、そんな母と一緒に暮らしてくれるという弟夫婦に感謝しなくては、と改めて思った。
 寂しくて部屋を決められないなどとぐずぐず言ってはいられない。早くいい部屋を決めて、母を安心させてあげなくては。

「とにかく、行ってみてくるね」

 努めて明るく晴香は言う。

「ちょっと遅くなるけど、ちゃんと家まで送るからおばさんは心配しないで」

 隣の孝也がまるで保護者みたいなことを言った。

「孝也君が一緒なら安心よ」

 広子が頷いた。
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